特定技能の受け入れ 人数枠の制限や条件について詳しく解説
2024年8月27日
特定技能の受け入れに際して、企業は人数枠の制限や各種条件を把握することが重要です。特定技能の制度は、人手不足を補うために導入されましたが、各企業には受け入れ人数枠は設けられているのでしょうか。本記事では、特定技能では外国人を何人まで受け入れが可能なのか、また、特定技能の5年間の受け入れ見込み目標数についても詳しく解説します。特定技能外国人労働者の受け入れを検討されている企業の皆様にとって必見の内容です。
特定技能では「企業ごとでの受け入れ人数枠」はある?ない?
技能実習生では、企業への受け入れ人数には上限が設定されていましたが、特定技能制度では受け入れ人数の制限はありません。ただし、介護分野と建設業については例外となり、それぞれ人数制限の条件が設けられています。それ以外の分野であれば、制限なく特定技能人材の雇用が可能となります。
これらの制限は、日本国内の労働市場や外国人労働者の受け入れ状況を考慮して調整されており、受け入れ人数の上限を設けることで、外国人労働者の受け入れが適切に管理されています。企業や業界ごとのニーズに応じて、枠の見直しや追加が行われることもあります。
介護分野と建設業についての人数枠について詳しく解説します。
介護分野・建設分野の特定外国人受け入れ人数枠について
介護分野は特定技能2号がないため、特定技能1号のみの対象となります。特定技能1号の人材を受け入れる際は、「事業所で受け入れることができる1号特定技能外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること」と決められています。また、建設分野については、分野別運用方針において、「特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人の数と特定活動の在留資格で受け入れる外国人(外国人建設就労者)の数の合計が、受入れ機関の常勤の職員(外国人技能実習生、外国人建設就労者、1号特定技能外国人を除く。)の総数を超えないこと」とされています。
特定技能制度において、介護分野と建設分野だけ人数枠が決められているのは、いくつかの理由があります。
●需要と供給のバランスのため:これらの分野は日本国内での労働需要が非常に高く、かつ専門的なスキルやトレーニングが必要です。そのため、適切な人数の外国人労働者を受け入れることで、過剰な労働者の流入を防ぎ、労働市場のバランスを保つことができます。
●質の確保のため:特定技能の介護と建設分野では、高い技能と専門性が求められるため、人数を制限することで、受け入れる労働者の質を確保し、業界全体の水準を維持することが目的です。
●地域への影響のため:介護や建設業界は地域によって需要の差が大きい場合があり、特定の地域に偏ってしまうと問題が生じる可能性があります。人数枠を設けることで、地域ごとの需要に応じた調整が可能になります。
●政策的な配慮のため:特定技能制度の運用には、政策的な配慮が含まれます。人数枠を設定することで、制度の効果を評価しながら、必要に応じて調整することができるため、長期的に安定した運用が可能になります。
このような理由から、特定技能制度の介護分野と建設分野だけに人数枠が設けられています。
特定技能の受け入れ見込み数(目標人数)について
特定技能外国人の受け入れ人数は、年間で一定の上限が設定されています。この上限は、分野ごとに異なり、年度ごとに政府によって発表されます。企業は、この上限を超えないように特定技能外国人の受け入れを計画する必要があります。
政府により特定技能の受け入れ見込み数が設定された背景には、日本の労働市場における外国人労働者の受け入れに関する複雑な課題がありました。日本は、少子高齢化が進行し、労働力不足が深刻化していました。そのため、外国人労働者を受け入れる必要性が高まっていましたが、一方で過剰な受け入れが日本社会や労働市場に与える影響も懸念されていました。外国人労働者が増えすぎることも問題とされていたのです。
特定技能制度が導入された2019年には、これらの問題を解決するために、特定技能1号と2号の2種類が設定されました。特定技能1号は、短期間の就労を前提に、外国人労働者を幅広い業種で受け入れるもので、具体的な人数制限は設けられていません。一方、特定技能2号は、特定の高度な技能を持つ外国人を対象にした制度で、受け入れ人数には具体的な上限が設定されています。
この受け入れ見込み数の設定は、外国人労働者の受け入れが日本の経済や社会に適切に調和するように管理するための措置です。また、受け入れ人数枠を設けることで、労働市場の安定を図り、外国人労働者が日本社会に円滑に統合されるよう配慮しています。
コロナ禍の影響によって5年間の受け入れ目標人数を下回る運用実績に
特定技能制度が開始した当初、5年間の受け入れ見込み数が設定されていました。この5年間は2019~2023年(令和1年~5年)の受け入れ人数となります。この5年の間にコロナ禍の影響による大きな経済情勢の変化があったため、令和4年8月に受入れ見込数見直しが行われました。当初の5年間の見込みと比べ、コロナ禍の影響で一部の業種を除き大半の業種において、特定技能の受け入れ見込み数は低く再設定されました。しかし、実際の特定技能受け入れ実績は、再設定された5年間の見込み数にも足りていない状況です。
令和6年3月には、また新たな向こう5年間の特定技能の受け入れ見込み数が設定されています。
各業種の目標人数は、制度開始からの最初の5年間の目標を大幅に上回る値になっており、これは日本の労働人口減少問題が深刻化していることに因ります。
受入れ見込数の算出方法 は下記の通りです。
各分野において、5年後(令和10年度)の産業需要等を踏まえ、以下の計算で算出。
受入れ見込数=5年後の人手不足数-(生産性向上+国内人材確保)
【法務省のウェブサイト】https://www.moj.go.jp/isa/content/001359454.pdf
■分野別の人数枠(5年間の見込み数目標の比較と特定技能1号在留者数について)
業種:令和1~5年/令和6~10年
● 介護:最大60,000人/最大60,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、28,400人です。
● ビルクリ ーニング:最大37,000人/最大37,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、28,400人です。
● 工業製品 製造業:最大31,450人/最大173,300人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、40,069人です。
● 建設:最大40,000人/最大80,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、24,433人です。
● 造船・ 舶用工業:最大13,000人/最大36,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、7,514人です。
● 自動車 整備:最大7,000人/最大10,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、2,519人です。
● 航空:最大2,200人/最大4,400人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、2,519人です。
● 宿泊:最大22,000人/最大23,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、401人です。
● 農業:最大36,500人/最大60,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、23,861人です。
● 漁業:最大9,000人/最大17,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、2,669人です。
● 飲食料品 製造業:最大34,000人/最大139,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、61,095人です。
● 外食業:最大53,000人/最大53,000人
令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、13,312人です。
● 自動車 運送業:見込み数設定なし/最大24,500人
● 鉄道:見込み数設定なし/最大3,800人
● 林業:見込み数設定なし/最大1,000人
● 木材産業:見込み数設定なし/最大5,000人
令和6~10年の特定技能の業種全体受け入れ見込み数の目標値は、820,000人です。これは、特定技能制度がはじまった最初の5年間の見込み数345,150人の2.4倍にあたる数字目標です。令和5年12月末の特定技能1号在留者数は、208,425人で、最初の5年間の見込み目標の60%ほどしか達成されていない結果となっています。
この特定技能の受け入れ見込み数字目標は、需要の変動に応じて調整されることがありますが、今後5年間目標を通じてこの先の日本にも、特定技能外国人は必要不可欠な人材として活用すべきことが常識だと伺えます。
特定技能の受け入れ人数枠の制限や条件のまとめ
特定技能制度の受け入れ見込み数は、当初の5年間目標を上回る数値に設定されています。この状況を踏まえ、各業種の企業は迅速に特定技能制度の認識を深め、その運用について真剣に検討する必要があります。業務の効率化と人材確保のため、特定技能制度の導入は不可欠です。適切な運用により、業務の円滑化と企業の持続的成長が期待できるでしょう。